安河内眞美のコラム

コラム 第2回「掛け軸のこと」

”桐箱の蓋を開け、中から巻き上げられた軸を取り出し巻緒を解く。矢筈にひもを掛けて掲げ、ゆっくりと巻かれた軸を伸ばしていく…”

軸をゆっくりと伸ばしていく

”掛け軸”を拝見するとき、何とも言えない敬虔な気持ちになることがあります。
掛け軸というものは当然、中国や韓国にもありますが、 日本の掛け軸文化というものは長い歴史の中で、 日本独自の風土や文化に洗練され、高い完成度を持っていると言えるでしょう。

もちろん、中身(本紙)が大切なのはいうまでもありませんが、 掛け軸の意匠や支度(箱や付属品のこと)もその価値を左右する大きな条件となります。
良いものというのはやはりそれなりの表装がなされている訳で、 軸を掛ける際に、まだその中身を見ないうちから、その軸先や表装裂の美しさ、 仕立ての仕事の素晴らしさに、期待に胸を膨らませることも度々あります。
(必ずしも支度や仕立ての意匠が良いからと言って中身もそれに見合ったものとか限りませんが…)

季節折々に合わせて、お気に入りの軸を掛けることは、そこに季節を呼び込むことだと思います。
日本人はそうやって、お客様をお迎えする空間や自らが季節を感じ楽しむことの出来る空間を 演出してきたのではないでしょうか。